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賃貸物件の給湯器が故障!費用は誰が払う?連絡先と対処法

賃貸物件で突然給湯器が故障して、お湯が出なくなってしまった――。冬場はもちろん、夏場でもお湯が使えないのは非常に不便で困ってしまいますよね。シャワーを浴びることも、食器を洗うこともままならず、日常生活に大きな支障をきたします。

このような事態に直面したとき、「修理費用は誰が負担するのだろう?」「どこに連絡すれば良いのだろう?」と不安に思う方も多いでしょう。賃貸物件における給湯器の故障は、入居者自身が全てを抱え込む必要はありません。しかし、どのように対応すれば良いのかを知っておくことは、スムーズな解決のために非常に重要です。

この記事では、賃貸物件で給湯器が故障した場合の費用負担の原則や、入居者が取るべき具体的な対応手順、修理か交換かの判断基準、そしてよくある疑問までを詳しく解説します。給湯器の故障に慌てず、適切に対処するために、ぜひ最後までご確認ください。

目次

賃貸物件の給湯器が故障したらどうする?

賃貸物件に住んでいると、様々な設備が備え付けられています。エアコン、インターホン、そして給湯器などもその一つです。これらの設備は、日々の生活に欠かせないものですが、残念ながら時間とともに劣化し、故障してしまう可能性があります。

特に給湯器は、お湯を供給するという重要な役割を担っているため、故障すると生活への影響は甚大です。お湯が使えないという状況は、衛生面でも精神面でも大きな負担となります。

給湯器が故障した際にまず頭をよぎるのは、「一体誰がこの状況を解決してくれるのか」「そして、その費用は誰が支払うのか」という疑問でしょう。賃貸物件の場合、設備の管理や修繕に関する責任は、基本的に大家さん(貸主)にあります。しかし、例外も存在するため、状況を正しく把握し、適切な手順で対応することが求められます。

ここでは、給湯器が故障した際に、まず誰が費用を負担するのか、そして入居者であるあなたが取るべき対応手順について詳しく解説していきます。慌てずに、一つずつ確認していきましょう。

賃貸物件の給湯器故障、まず誰が費用負担?

賃貸物件の給湯器が故障した場合に、最も気になるのが修理や交換にかかる費用の負担についてです。高額になりがちな給湯器の費用を、入居者自身が支払わなければならないのか、それとも大家さんが負担してくれるのかは、切実な問題です。

結論から言うと、賃貸物件に設置されている給湯器のような設備が、通常の生活の中で自然に劣化したり、経年劣化によって故障したりした場合の修理・交換費用は、原則として大家さん(貸主)が負担することになっています。これは、民法などの法律に基づいた賃貸借契約における貸主の義務によるものです。

しかし、全ての場合において大家さんが負担するというわけではありません。入居者(借主)が費用を負担しなければならないケースも存在します。ここでは、それぞれのケースについて、その根拠や判断基準を詳しく見ていきましょう。

原則は貸主(大家さん)が負担する

賃貸物件の大家さんには、入居者が物件を快適かつ安全に利用できるよう、必要な設備を維持・管理する義務があります。これは民法第606条に定められている貸主の修繕義務に基づいています。

例えば、ある資料によれば、この民法第606条に基づき、賃貸人は賃貸物の使用に必要な修繕義務を負うことが明記されており、給湯器の故障が借主の責めに帰すべき事由でない限り、貸主が修繕に応じる必要があるとされています。(参考:https://www.lifeplan.or.jp/alps/alps_pdf/alps143/alps143_23.pdf

具体的には、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とされています。

給湯器は、賃貸物件において「使用及び収益に必要な設備」の一つとみなされます。そのため、給湯器が経年劣化や通常の使用による摩耗によって故障し、お湯が供給できなくなった場合、その修理や交換にかかる費用は、原則として大家さんが負担しなければなりません。

大家さんは、自ら業者を手配し、修理や交換を進める責任があります。入居者は、故障したことを大家さんまたは管理会社に通知するだけで、費用負担の心配をする必要はありません。

このように、賃貸物件の給湯器が自然故障した場合の費用負担は、法律上、貸主である大家さんに課せられた義務であると理解しておきましょう。

借主(入居者)が費用を負担する場合とは?

原則として給湯器の故障修理費用は大家さん負担ですが、例外的に借主である入居者が費用を負担しなければならないケースも存在します。これは、故障の原因が入居者の側にあった場合に該当します。主なケースとしては、以下の2つが挙げられます。

故意または過失による故障

入居者が故意(わざと)に給湯器を破損させた場合や、過失(不注意)によって故障させてしまった場合、その修理費用は入居者の負担となります。

  • 故意の例:
    • 腹いせに給湯器本体やリモコンを叩き壊した
    • いたずらで給湯器の配管を傷つけた
  • 過失の例:
    • 給湯器の近くで物を運び中にぶつけて本体を破損させた
    • 冬場に給湯器や配管の凍結防止措置を怠った結果、凍結・破裂させた(特に寒冷地や寒い日に長期間留守にする場合など、契約書で凍結防止措置の義務が入居者にあると定められている場合)
    • メーカーが指定する以外の洗浄剤などを使用し、内部部品を損傷させた

「過失」の範囲については、どこまでが「不注意」にあたるのか判断が難しいケースもあります。しかし、一般的に社会通念上求められる注意義務を怠ったと判断される場合は、過失とみなされる可能性があります。

通常の使用方法以外での故障

給湯器をメーカーが想定している「通常の使用方法」以外で使用した結果、故障した場合も、入居者の負担となることがあります。

  • 通常の使用方法以外の例:
    • 給湯器の仕様を超えた高温・高圧での無理な使用
    • 給湯器に接続して使用することが想定されていない機器を無理に接続した
    • 給湯器の設置場所を無断で変更したり、改造を加えたりした

これらのケースは、入居者の利用方法に直接的な原因があるため、その責任を入居者が負うことになります。ただし、これらの判断も専門的な知識が必要な場合や、大家さん・管理会社との話し合いが必要になることもあります。

費用負担の根拠となる法律や契約内容を確認する

給湯器の故障が発生した場合、誰が費用を負担するかの根拠となるのは、主に民法の規定と、あなたが大家さんまたは管理会社と締結した賃貸借契約書の内容です。

前述の通り、民法では貸主の修繕義務が定められていますが、賃貸借契約書には、民法の規定と異なる特約が定められている場合があります。

例えば、以下のような特約が記載されている可能性もゼロではありません。

  • 「物件の修繕費用は、原因の如何にかかわらず、全て借主の負担とする」
  • 「〇万円以下の小規模な修繕については、借主の負担とする」
  • 「設備が故障した場合、修繕・交換の判断や手配は借主が行い、費用は借主が一旦立て替えて後日貸主が精算する」

ただし、これらの特約が必ずしも有効とは限りません。特に、借主にとって一方的に不利な内容であったり、民法の強行規定に反するような特約は無効と判断されることがあります。消費者契約法など、他の法律も関連してくる場合があります。

重要なのは、給湯器が故障した際に、まず賃貸借契約書の「修繕」に関する項目や、「設備リスト」の項目を確認することです。給湯器が「貸主の設備」として明記されているか、修繕の責任や費用負担に関する特約がどうなっているかを確認しましょう。

不明な点があれば、自己判断せず、まずは大家さんや管理会社に連絡し、状況を説明して指示を仰ぐのが最も安全な方法です。もし、費用負担について納得がいかない場合や、大家さん・管理会社との間で意見の相違が生じた場合は、消費者センターや弁護士、賃貸トラブルに詳しい相談窓口に相談することも検討しましょう。

費用負担の原則と例外 費用負担者 原因 根拠
原則 貸主(大家さん) 経年劣化、通常の使用による自然故障 民法上の貸主の修繕義務
例外 借主(入居者) 故意または過失による破損、通常の使用方法以外での故障(改造など) 民法上の損害賠償義務、賃貸借契約違反の可能性
確認すべき事項 賃貸借契約書の修繕に関する特約、設備の所有者、凍結防止措置の義務など 賃貸借契約書、重要事項説明書

給湯器故障の際に賃貸で取るべき対応手順

「お湯が出ない!」と気づいたら、パニックになる前に、以下の手順に沿って落ち着いて行動しましょう。適切な手順を踏むことで、問題の早期解決につながります。

故障かな?と思ったらまず確認すること

「給湯器が故障したかも?」と思っても、実は簡単な原因で解決できる場合もあります。大家さんや管理会社に連絡する前に、まずは自分でできる簡単な確認を行いましょう。これによって、無駄な連絡を省いたり、業者に正確な状況を伝えたりすることができます。

給湯器本体の状態やエラーコード

まず、給湯器のリモコンを見てみましょう。エラーコードが表示されていませんか?エラーコードは、故障の内容や原因を示している場合が多いです。エラーコードが表示されている場合は、その番号を控えておきましょう。給湯器の取扱説明書や、メーカーのウェブサイトでエラーコードの意味を調べることができます。簡単なエラーであれば、自分でリセット操作を行うことで回復する場合もあります。(例:電源プラグの抜き差し、リモコンの運転ボタン長押しなど)。

次に、給湯器の本体を設置場所で目視で確認してみましょう。外観に明らかな破損がないか、配管から水が漏れていないか、異音や異臭がしないかなどをチェックします。特に冬場は、給湯器や配管が凍結していないかも確認が必要です。凍結している場合は、解凍を待つか、取扱説明書に記載されている解凍方法を試す必要があるかもしれません。

ガス・電気・水道の確認

給湯器はお湯を作るために、ガス(または灯油、電気)、電気、水道を利用します。これらの供給に問題がないかを確認しましょう。

  • ガスの確認: 他のガス機器(ガスコンロなど)が使えるか確認してください。もし他のガス機器も使えない場合は、ガスの供給自体に問題がある可能性があります。ガスメーターの栓が閉まっていないか、またはガスメーターの安全装置が作動していないか確認しましょう。(マイコンメーターの場合、赤ランプが点滅している場合は安全装置作動のサインです。復帰方法を試してみてください。)プロパンガスの場合は、ボンベが空になっていないかも確認が必要です。
  • 電気の確認: 給湯器には電気供給が必要です。給湯器専用のブレーカーが落ちていないか確認しましょう。落ちている場合は、ブレーカーを上げてみてください。リモコンの電源が入るかどうかも確認ポイントです。
  • 水道の確認: 断水していないか、給湯器につながる元栓が開いているか確認しましょう。他の水道(水のみ)は正常に使えるかどうかもチェックします。

リモコンや電源の確認

意外と見落としがちなのが、給湯器のリモコンや電源の問題です。

  • リモコンの電池切れ: ワイヤレスリモコンの場合、電池切れで操作できないことがあります。電池を交換してみてください。
  • リモコンの故障: リモコンの表示がおかしい、ボタンが反応しないなどの場合は、リモコン自体の故障の可能性もあります。
  • 電源プラグの抜け: 給湯器本体のコンセントが抜けていないか確認しましょう。特に外部に設置されている場合は、何かの拍子に抜けてしまう可能性もゼロではありません。
  • 運転モード: 給湯器の運転スイッチが入っているか、お湯の設定温度は適切か、リモコンのモード設定(例えば「低温」や「足し湯」など)が間違っていないか再確認しましょう。

これらの確認で問題が解決しない場合や、明らかに給湯器本体の故障と思われる場合は、大家さんや管理会社への連絡が必要です。

連絡先は管理会社か大家さん

自分で簡単な確認をしてもお湯が出ない場合、またはエラーコードが表示されていて原因が不明な場合は、迷わず大家さんまたは管理会社に連絡しましょう。

賃貸物件の多くは、日常的な管理業務を専門の管理会社に委託しています。その場合、修繕に関する連絡窓口は管理会社となります。まずは賃貸借契約書や重要事項説明書を確認し、「緊急連絡先」や「設備の修繕に関する連絡先」として記載されている電話番号に連絡しましょう。

管理会社が入っていない物件の場合は、大家さんに直接連絡することになります。契約書に記載されている大家さんの連絡先(電話番号、メールアドレスなど)を確認しましょう。

  • 【注意点】
    • 夜間や休日の場合、管理会社によっては緊急連絡用の窓口を設けている場合があります。契約書や入居時の案内を確認しましょう。
    • 契約書に定められた連絡先以外に、勝手に修理業者を手配したり、自分で修理しようとしたりすることは避けましょう。費用負担や責任問題でトラブルになる可能性があります。

連絡時に伝えるべき情報

大家さんや管理会社に連絡する際は、以下の情報を正確かつ具体的に伝えるように心がけましょう。迅速な対応のために重要なポイントです。

  • いつ発生したか: お湯が出なくなったのはいつか(例:今日の朝から、昨日のお風呂の途中からなど)。
  • どのような状況か:
    • 全くお湯が出ないのか、水は出るがお湯にならないのか。
    • 特定の蛇口だけか、全ての蛇口でお湯が出ないのか。
    • 給湯器のリモコンにエラーコードが表示されているか(表示されている場合はコード番号を伝える)。
    • 給湯器本体から異音や異臭、水漏れはないか。
    • 自分で確認したこと(ガスは使えるか、ブレーカーは落ちていないか、リモコンの電源は入るかなど)と、その結果。
  • あなたの情報:
    • 建物名と部屋番号。
    • あなたの氏名。
    • 日中連絡が取れる電話番号。
  • 給湯器の情報(分かれば):
    • 給湯器のメーカー名と型番(本体に貼られているシールなどで確認できる場合があります)。
    • 給湯器のおおよその使用年数(内見時や入居時に確認していれば)。

具体的な状況を伝えることで、大家さんや管理会社は故障の原因を推測しやすくなり、適切な業者を手配したり、必要な部品を準備したりすることができます。スマートフォンで給湯器本体やリモコンのエラー表示などを写真に撮っておくと、より正確に状況を伝えられる場合があります。

連絡後の一般的な流れと期間

大家さんや管理会社に給湯器の故障を連絡した後、一般的には以下のような流れで対応が進みます。

  • 連絡受付: 大家さんまたは管理会社が故障の連絡を受け付けます。
  • 状況確認と業者手配: 伝えられた情報をもとに、状況を把握し、給湯器の修理や交換を行う専門業者に連絡し、現地調査や修理・交換作業の手配を行います。管理会社が入っている場合は、管理会社がこれらの手続きを代行します。
  • 現地調査・診断: 手配された業者があなたの部屋を訪問し、給湯器の状態を詳しく調査し、故障の原因や修理の可否、必要な部品などを診断します。この際、あなたに立ち会いや、作業のスペース確保などを求められる場合があります。
  • 修理・交換: 業者の診断結果に基づき、修理または交換作業が行われます。修理で済む場合はその場で完了することも多いですが、部品の取り寄せが必要な場合は日数がかかります。交換の場合は、新しい給湯器の手配と設置作業が必要となります。
  • 復旧: 修理または交換が完了し、お湯が正常に出ることを確認したら、給湯器の復旧となります。

対応にかかる期間は、故障の原因、必要な部品の在庫状況、業者の手配状況、時期(年末年始や年度末など繁忙期は遅れる傾向があります)、そして大家さんや管理会社の対応スピードによって大きく異なります。

簡単な修理であれば即日~数日で完了することもありますが、給湯器本体の交換が必要な場合や、特殊な機種の場合、部品の取り寄せに時間がかかる場合などは、1週間〜2週間以上かかることも少なくありません。特に、古すぎる給湯器や、特殊なタイプの給湯器は、部品の製造が終了していたり、互換性のある新しい機種を探すのに時間がかかったりする場合があり、さらに日数がかかる可能性もあります。

対応の進捗状況については、大家さんや管理会社に定期的に確認するようにしましょう。いつ頃業者が見に来るのか、修理か交換になるのか、いつ頃復旧の見込みなのかなどを把握することで、今後の予定を立てやすくなります。

応急処置で一時的にしのぐ方法

給湯器の修理や交換には時間がかかる場合があります。その間、お湯が全く使えないと困ってしまいますよね。復旧までの間、一時的に不便をしのぐための応急処置をいくつかご紹介します。

  • 電気ケトルや鍋でお湯を沸かす: 飲み物やカップ麺用だけでなく、洗面器に貯めて洗顔や歯磨きに使用したり、食器を洗うために使ったりできます。ただし、少量ずつしか作れないため、大量のお湯が必要な入浴などには向きません。火の取り扱いには十分注意しましょう。
  • 銭湯やコインシャワーを利用する: どうしてもお風呂に入りたい場合は、近くの銭湯やスーパー銭湯、スポーツジムなどのコインシャワーを利用するのも一つの方法です。
  • ガスコンロやカセットコンロ: カセットコンロがある場合は、ガスコンロが使えない場合でもお湯を沸かせます。必ず換気を十分に行い、火災に注意して使用しましょう。
  • 温水洗浄便座: 温水洗浄便座がお湯を出せるタイプであれば、限られた量ですがお湯を出すことができます。洗面器などに貯めて使うことも可能です。
  • 給湯器の凍結の場合: もし凍結が原因と思われる場合は、取扱説明書を参考に、リモコンの運転を切って給湯器本体の電源プラグは抜かずに待ち、自然解凍を試みる、または指定された場所にぬるま湯をかけるなどの方法があります。ただし、熱湯をかけると配管などが破裂する危険があるため、絶対に行わないでください。

これらの方法はあくまで一時的なしのぎです。根本的な解決のためには、大家さんや管理会社による給湯器の修理・交換を待つ必要があります。

賃貸物件の給湯器故障、修理?交換?

業者が給湯器を診断した後、修理で対応できるのか、それとも交換が必要なのかの判断が行われます。この判断は、給湯器の状態や寿命、そして修理にかかる費用などを総合的に考慮して行われます。入居者としては、この判断基準を知っておくことで、状況を理解しやすくなります。

修理か交換かの判断基準

給湯器の修理と交換の判断は、主に以下の要素に基づいて行われます。

  • 給湯器の製造年数と寿命: 給湯器の一般的な設計標準利用期間(寿命の目安)は10年程度と言われています。使用期間が10年未満であれば修理で対応できる可能性が高いですが、10年を超えている場合は、他の部品も劣化している可能性が高く、修理してもすぐに別の箇所が故障する「いたちごっこ」になるリスクがあります。そのため、製造から10年以上経過している場合は、交換が推奨されることがほとんどです。
  • 故障箇所の特定と修理の可否: どのような部品が故障しているのかを特定します。簡単な部品の交換で済む場合は修理が可能です。しかし、主要な部品(熱交換器など)が故障している場合や、複数の箇所が故障している場合は、修理費用が高額になったり、修理自体が難しかったりするため、交換が選択されます。
  • 部品の供給状況: 修理に必要な部品が、メーカーで生産・在庫されているかどうかも重要な判断基準です。製造から年数が経っている給湯器の場合、修理部品の生産が終了しており、修理が物理的に不可能な場合があります。
  • 修理費用と交換費用の比較: 修理費用が高額になる場合、新しい給湯器に交換した方が長期的に見て費用対効果が高いと判断されることがあります。特に、修理費用が新しい給湯器本体価格の半分を超えるような場合は、交換が検討されることが多いです。
  • 省エネ性能: 最新の給湯器は、古い給湯器に比べて省エネ性能が向上しています。大家さんにとっては、ランニングコストの削減や、物件の魅力を高める目的で、寿命前でも交換を選択する場合があります。

最終的な判断は、大家さんまたは管理会社が、業者の診断結果とこれらの要素を考慮して行います。

給湯器の一般的な寿命とサイン

給湯器の一般的な設計標準利用期間は、およそ10年とされています。ただし、これはあくまで目安であり、使用頻度、設置環境、メンテナンス状況などによって寿命は前後します。中には15年以上問題なく使える給湯器もあれば、数年で故障してしまう給湯器もあります。

給湯器が寿命に近い、または故障の前兆として現れるサインには以下のようなものがあります。

  • お湯の温度が不安定になる: 設定温度どおりにお湯が出ない、急に熱くなったり冷たくなったりする。
  • お湯が出るまでに時間がかかる: 蛇口をひねってからお湯になるまでが以前より遅くなった。
  • 給湯器本体から異音や振動がする: 運転時に「ゴーッ」「ピーッ」といったいつもと違う音や、大きな振動が発生する。
  • 頻繁にエラーコードが表示される: 一度リセットしても、同じエラーが繰り返し表示される。
  • 給湯器本体や配管から水漏れがある: 給湯器の下が常に濡れている、ポタポタと水が垂れている音がする。
  • 排気口から黒い煙が出る: 不完全燃焼を起こしている可能性があり危険です。
  • リモコンの表示がおかしい、反応が悪い: リモコン自体が劣化している可能性があります。

これらのサインが見られた場合は、大きな故障につながる前兆かもしれません。すぐに故障するわけではありませんが、大家さんや管理会社に情報を共有しておくと、今後の対応がスムーズになる場合があります。

交換にかかる期間はどれくらい?

給湯器を新しいものに交換する場合、修理よりも時間がかかる傾向があります。交換にかかる期間は、以下の要素によって変動します。

  • 新しい給湯器の手配: 業者が在庫を持っていれば比較的早いですが、特定の機種やメーカーの場合、メーカーや代理店からの取り寄せとなり、数日かかることがあります。エコキュートなど特殊なタイプはさらに時間がかかる可能性もあります。
  • 工事日程の調整: 業者との工事日程調整が必要です。特に引越しシーズンや年末年始など、業者が忙しい時期は予約が取りにくく、工事まで待たされることがあります。
  • 交換工事自体にかかる時間: 給湯器の交換工事自体は、標準的な工事であれば半日〜1日程度で完了することが多いです。しかし、設置場所の状況が特殊だったり、追加工事が必要だったりする場合は、もう少し時間がかかることもあります。

これらの要素を合わせると、大家さんや管理会社に連絡してから、新しい給湯器の設置が完了してお湯が使えるようになるまで、早ければ数日、通常は1週間程度、遅い場合は2週間以上かかることも覚悟しておく必要があります。

修理・交換中の仮設給湯器について

給湯器の修理や交換に時間がかかる場合、お湯が使えない期間が発生します。この期間、大家さんや管理会社が「仮設給湯器」を設置してくれることがあるのでしょうか?

結論から言うと、残念ながら仮設給湯器の設置は義務ではありませんし、一般的な対応とは言えません。仮設給湯器のレンタルには費用がかかりますし、設置や撤去の工事も必要になるため、大家さんや管理会社がそこまで対応してくれるケースは非常に稀です。

ただし、人道的な配慮や、入居者の強い要望、あるいは大家さんが迅速な対応をアピールしたい場合などに、個別に検討される可能性はゼロではありません。もし、お湯が使えない期間が非常に長引きそうで、どうしても困る場合は、大家さんや管理会社に相談してみる価値はあるかもしれません。その際も、費用が発生する可能性が高いことや、対応が難しい場合もあることを理解した上で相談しましょう。

多くの場合、仮設給湯器の手配はないため、お湯が使えない期間は前述の「応急処置で一時的にしのぐ方法」で対応することになります。

賃貸物件の給湯器に関するその他の疑問

給湯器の故障は突然起こるため、様々な疑問や不安が湧きやすい状況です。ここでは、賃貸物件の給湯器に関するその他のよくある疑問について解説します。

故障のサインや前兆を見分けるポイント

先ほども給湯器の寿命のサインに触れましたが、もう少し具体的に、「この症状が出たら要注意」という前兆を見分けるポイントを挙げてみましょう。日頃から給湯器の状態に注意しておくことで、故障の発生を予期したり、早期に大家さん・管理会社に相談したりすることができます。

  • リモコンにエラーコードが時々表示される: すぐに消えるエラーでも、頻繁に表示される場合は要注意です。給湯器が内部で異常を検知しているサインかもしれません。
  • お湯の勢いが弱くなった: 水圧の問題ではなく、給湯器を通したお湯の勢いだけが弱くなった場合、内部の配管や部品に問題が生じている可能性があります。
  • 設定温度よりも低い(高い)お湯が出る: 給湯器の温度調整機能に異常があるかもしれません。特に設定温度よりも極端に熱いお湯が出る場合は危険です。
  • お風呂の追い焚きや自動湯張りがうまくいかない: 給湯機能だけでなく、追い焚きや湯張り機能に不具合が見られる場合も、給湯器全体の劣化や故障が進んでいるサインです。
  • 給湯器から「ピー」や「キュッ」といった小さな異音がする: 燃焼音やポンプ音とは違う、聞き慣れない音がする場合は、内部の部品の摩耗などが原因かもしれません。
  • 給湯器周辺で焦げ臭い、またはガス臭い匂いがする: これは非常に危険なサインです!不完全燃焼やガス漏れの可能性があります。すぐに給湯器の使用を中止し、窓を開けて換気し、契約しているガス会社または大家さん・管理会社に緊急連絡してください。絶対に自分で対処しようとしないでください。
  • 給湯器本体の色が変わったり、サビがひどかったりする: 特に屋外設置の場合、長年の風雨にさらされて外装が劣化していると、内部の部品も劣化が進んでいる可能性が高いです。

これらのサインが見られた場合は、大きな故障につながる前兆かもしれません。すぐに故障するわけではありませんが、大家さんや管理会社に報告し、点検や交換の相談をすることをお勧めします。

故障中の銭湯代などは請求できる?

給湯器が故障してお湯が使えない期間、銭湯やコインシャワーを利用したり、電気ケトルなどで都度お湯を沸かしたりと、通常よりも費用や手間がかかることがあります。この間に発生した銭湯代や追加の電気代・ガス代などを、大家さんや管理会社に請求できるのでしょうか?

結論から言うと、法的に必ず請求できるとは限りません。多くの場合、これらの費用を大家さん・管理会社に負担させることは難しいと考えられます。

その理由としては、以下のような点が挙げられます。

  • 生活上の不便は想定の範囲内?: 賃貸借契約において、設備の故障による一時的な不便はある程度やむを得ないものと解釈されることがあります。
  • 損害額の特定が難しい: 銭湯代は領収書で証明できても、追加で沸かしたお湯にかかる電気代やガス代の正確な金額を特定・証明するのは困難です。
  • 契約書に定めがない: 通常、賃貸借契約書に「設備故障中の代替手段にかかる費用は貸主負担」といった特約は含まれていません。

ただし、以下のようなケースでは、交渉の余地があるかもしれません。

  • 給湯器の復旧に不当に長期間(数週間~数ヶ月など)かかっている場合: 大家さんや管理会社が修繕義務を怠っていると判断されるような状況の場合。
  • 契約書に明確な定めがある場合: まれに、契約書に設備故障時の代替措置や費用負担に関する特約が記載されている場合があります。

もし請求したい場合は、かかった費用(銭湯代の領収書など)をまとめて大家さんまたは管理会社に相談してみましょう。しかし、対応は大家さん・管理会社の判断によりますので、必ずしも認められるわけではないことを理解しておく必要があります。トラブルを避けるためには、請求が難しいことを前提として、円満な解決を目指す方が賢明な場合が多いです。

契約書や重要事項説明書の確認ポイント

給湯器が故障した際に限らず、賃貸物件でトラブルが発生した際に最も重要な書類が、賃貸借契約書と重要事項説明書です。給湯器に関しては、以下の点を中心に確認しましょう。

  • 修繕義務に関する条項: 賃貸借契約書の「修繕」や「費用の負担」に関する条項を確認します。貸主の修繕義務の範囲、借主が負担すべき修繕(小規模なものなど)に関する特約が記載されていないか確認しましょう。
  • 設備リスト: 重要事項説明書や賃貸借契約書に添付されている「設備リスト」を確認します。給湯器が設備として明記されており、その所有者(貸主または借主)がどうなっているかを確認します。通常、給湯器は貸主の設備ですが、造り付けではないもの(例えば、前の入居者が残していったものなど)で、契約上は借主の所有物とみなされるような特殊なケースもゼロではありません(非常にまれですが)。
  • 緊急連絡先: 設備故障などの緊急時に連絡すべき管理会社や大家さんの連絡先が記載されています。電話番号だけでなく、受付時間や夜間・休日の緊急連絡先の有無も確認しましょう。
  • 免責事項や特約: 契約書全体を通して、設備の故障に関する免責事項や、標準的な修繕義務と異なる特約がないか確認します。
  • 凍結防止措置に関する条項: 寒冷地や冬場の契約の場合、給湯器や配管の凍結防止に関する条項が記載されていることがあります。特に長期間家を空ける際の措置について、入居者に義務が課せられている場合がありますので注意が必要です。

これらの書類を事前に確認しておくと、給湯器が故障した際に慌てず、適切な連絡先に正しい情報を伝えることができます。また、費用負担についても、契約内容に基づいた冷静な判断が可能になります。契約書は引っ越しの際にもらえる重要な書類ですので、大切に保管しておきましょう。

まとめ:賃貸物件の給湯器故障時は落ち着いて対応しよう

賃貸物件で給湯器が故障し、お湯が出なくなることは、非常に困る事態ですが、適切に対応すれば必ず解決できます。パニックにならず、落ち着いて対応することが最も重要です。

この記事で解説したポイントを改めて振り返りましょう。

  • 費用負担の原則: 賃貸物件の給湯器が経年劣化や通常使用で故障した場合、修理・交換費用は原則として大家さん(貸主)が負担します。これは民法上の貸主の修繕義務に基づくものです。
  • 借主負担の例外: 借主(入居者)の故意や過失による故障、または通常の使用方法以外での使用による故障の場合は、借主が費用を負担することになります。
  • 対応手順:
    • 自分で簡単な確認をする: エラーコード、ガス・電気・水道、リモコンなどをチェックし、一時的な問題でないか確認します。
    • 大家さんまたは管理会社に連絡する: 賃貸借契約書に記載された連絡先に、状況を正確に伝えます。
    • 業者の対応を待つ: 大家さんや管理会社が手配した業者が、現地調査や修理・交換を行います。
    • 応急処置でしのぐ: 復旧までの間、電気ケトルや銭湯などを利用して一時的に不便をしのぎます。
  • 修理か交換かの判断: 業者は給湯器の寿命(10年目安)、故障箇所、部品の有無、費用などを考慮して修理か交換かを判断します。10年以上の給湯器は交換となる可能性が高いです。交換には通常1週間程度かかることが多いです。
  • 契約書の確認: 賃貸借契約書や重要事項説明書で、修繕義務、設備リスト、緊急連絡先、特約などを確認しておくことがトラブル防止に役立ちます。

給湯器の故障は、大家さんや管理会社に連絡すれば、責任を持って対応してくれるべき問題です。一人で悩まず、まずは指定の連絡先に状況を伝えましょう。

もし、大家さんや管理会社の対応に不満がある場合や、費用負担について納得がいかない場合は、契約書の内容をよく確認した上で、消費者センターや弁貸、賃貸トラブルの相談窓口に相談することも検討できます。

しかし、ほとんどの場合、大家さんや管理会社は迅速に対応してくれるはずです。適切な手順を踏み、冷静に状況を伝えることで、給湯器の故障という困った状況も乗り越えられるでしょう。

最後に、この記事は賃貸物件の給湯器故障に関する一般的な情報を提供するものであり、個別の契約内容や状況によって対応が異なる場合があります。具体的な対応については、必ず賃貸借契約書をご確認いただき、大家さんまたは管理会社とご相談ください。必要に応じて専門家にご相談されることをお勧めします。

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